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甲状腺がん・環境省が公表した新データ/分析しました

【甲状腺がん・環境省が公表した新データ】
 3月28日に環境省が新たなデータを公表しました。福島県外3県の「甲状腺結節性疾患追跡調査結果(速報)について(お知らせ)」です。県外3県とは、山梨県(甲府市)、青森県(弘前市)、長崎県(長崎市)です。それらの市の子どもに福島県と同じ甲状腺検査を行って、福島県の場合と比較する研究調査です。
→ http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=17965

 その結果は一言で、「福島県外の子ども4365人の甲状腺を福島県と同じ方法で検査したが、甲状腺がんは1人だった。」

 環境省のコメントはありませんが、これは『福島県の甲状腺がんの発見率とほぼ同じだから、福島県の甲状腺がんは「アウトブレイク」ではない』と言いたげです。事実、報道各社の記事はそのように記しています。
→ http://www.asahi.com/articles/ASG3X64FWG3XULBJ00Y.html?iref=comtop_list_nat_n05

【分析しました】
 環境省の県外3県の検査受診者は4365人です。このうちでがん患者が1人ですから、『10万人当たりの発見率』は、22.9人です。

              1 ÷ 4365 × 10万 = 22.9

 
  
 一方、福島県の「県民健康管理調査」のデータでは、『10万人当たりの発見率』は、30.1人。

             74 ÷ 245891 × 10万 = 30.1

 なお、上の計算の際、福島県のデータは「一次検査受診者」の人数を分母にしました。更に、県外3県のデータと条件を合わせるために、2013年度の調査地域では、二次検査が進んでいる6市町村(いわき市、須賀川市、鏡石町、新地町、平田町、相馬市)のデータだけを使いました。その結果が上の数値です。
 

  環境省の県外3県の結果報告は、二次検査対象者44人のうち、自主的に提出された31人の二次検査データを基にしています。だから今後、もう少しがん患者が多く発見されるかもしれません。

 「22.9人」と「30.1人」では、ほぼ同じと思われます。そこで少し詳しくデータを見ました。

 先ず調査受診者の年齢構成ですが、福島県と県外3県を比較すると下の図になります。県外3県の調査では、幼児層が極めて少なく、中学生・高校生の層が明らかに多い。これが結果に反映する可能性があります。甲状腺がんは年齢の増加に伴い急増する傾向があるからです。(クリックして拡大)
人口比.jpg 
 次に、ある仮定の下で計算をしました。仮定とは「各年齢層の福島県の甲状腺がんの発見率と、県外3県のそれは同じ値」です。この仮定の下で県外3県4365人中の甲状腺がんの発見率を推計しました。

 計算結果が下の表。県外3県の患者数は計算では2.1人になります。つまり年齢構成を同じくすると、県外3県の「4365人中の甲状腺がん発見」は1人でなく、2人程度になる確率が最も高い、という見当です。(クリックして拡大)
計算表.jpg
 さらに、県外3県で「4365人中の甲状腺がん患者数」がポアソン分布に従うと仮定します。(たぶんこの仮定は間違っていません。)すると、下のような計算結果になります。

県外3県では4365人中に「平均で」2.1人の甲状腺患者が見つかる場合、(何百万人も検診して、その中で「4365人中に平均2.1人」という意味です。)

   
 ・新たに4365人を検査したとして、甲状腺患者がたまたま1人も見つからない確率は、12.2%
 ・同じく、たまたま1人だけ見つかる確率は、25.7%  (0人と1人で、併せて37.9%)
 ・同じく、たまたま2人だけ見つかる確率は、27.0%
 ・同じく、たまたま3人だけ見つかる確率は、18.9%
 ・同じく、たまたま4人以上見つかる確率は、16.2%

 甲状腺がん患者が1人の場合(これが今回起こったケース)と0人の場合の確率の合計が、約38%。2人以上見つかる場合は、約62%。

 つまり、4365人中の甲状腺がん患者が平均で2.1人(これは、福島県と県外3県とで年齢毎のがん発見率が同じと仮定し、年齢構成を考慮して計算した甲状腺がんの患者数)とすると、4365人中に0人または1人の患者が見つかる確率よりも、2人以上の患者が見つかる確率の方が2倍程度大きい、となります。

 そうすると、本当は県外3県の甲状腺がん発見率は福島より低いのではないか、との判断が出てきます。

 しかし考えようによっては、1/3の確率で1人または0人しか見つからない場合もあるし、それがたまたま環境省の調査で実現した、とも考えられます。

【結論】
 環境省の県外3県のデータと福島県民健康管理調査のデータを比べると、すぐに「ほぼ同じ」とは言えません。逆に2倍程度の差があるようにも思えますが、これも確実なことは言えません。

 確実なことが言えない最大の理由は、環境省の県外3県のデータの規模が小さすぎることです。統計的に意味ある結果を出そうとすれば、少なくとも5倍(21000人程度)の受診者が必要です。

 また、検診の時期や年齢層が福島県と県外3県で異なる事も問題です。

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